MEDIVA健康コラム

高齢者と一緒に食べる美味しい肉料理

2016年09月28日(水)

9月になり、朝晩は少しずつ涼しくなって夏の疲れがでやすい時期になってきました。
高齢の方と同居されているご家族の中には、おばあちゃんやおじいちゃんに栄養価の高い
食事を食べさせてあげたいと思うけれど、なかなか肉を食べてくれないから家族皆とは別
メニューになるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

家族全員がなるべく同じメニューで食事ができると嬉しいですよね。
肉は、体にあまりよくないのではないかと、つい消化がよくて手軽な卵や豆腐・うどんな
どの簡単なもので済ませてしまうこともあるかと思います。

しかし、そのような食事の頻度が多くなると血液の主な材料であるたんぱく質やビタミン
、鉄分などが不足することもあります。

そこで今月は、少ない量でも栄養素が豊富な『ひき肉』を使い、高齢の方と一緒に食べら
れる肉料理の工夫をご紹介したいと思います。

高齢になると、肉は硬くて食べづらいと敬遠されやすいのですが、肉を細かくしたひき肉
は、量を調整できたり丸めたりバラバラにしたりと形を自由に変えることができるので比
較的扱いやすい食材の1つです。

*ひき肉を使用した料理の工夫*

1. 味付けや香りで工夫

ひき肉に塩麹(こうじ)を混ぜて成形すると、塩麹が分泌する酵素の働きによって食材の
うまみや甘みが増し、美味しくなります。
酵素によってたんぱく質やでんぷんの分解がはじまるので、肉もやわらかくなり消化吸収
がよくなります。

生地の中に塩麹を入れて混ぜるとハンバーグのソースをかけなくてもそのままで味が付
き、焼いた後もきれいな焼き色が付くので、見た目もきれいに出来上がります。
注意点として、もう少し生地に味をつけたい時は、塩麹は『塩』を使用しているため、塩
分の取り過ぎにならないように『塩コショウ』ではなく、ナツメグやコショウなど香辛料
のみを使用することがおすすめです。

塩麹の味付けだけだと物足りないと思われる方は、とろけるチーズを中に入れたり、ひ
とくち大にまとめた肉の上に、チーズをのせてみてはいかがでしょうか。
また、ソースに生姜やからし・わさび・にんにくを少し加えてみると風味も増します。

2. 食べやすさの工夫

高齢になると、噛む力や飲み込む力が弱くなり、水気のないパサパサしたものや硬いもの
が食べにくくなります。そういった場合は、とろみをつけたり、使用する食材を工夫する
ことで改善できます。
ハンバーグのソースは、水溶き片栗粉などを使用し、とろみをつけて全体をあんかけ風に
すると飲み込みやすくなります。

ひき肉に小麦粉をまぜてから成形すると肉を加熱するとき溶けだしてくる脂やうま味成
分を小麦粉のでんぷんが吸いとって外へ流れないようにしてくれるため、冷めても美味し
く食べやすくなります。

小麦粉が焦げると香ばしい香りが出て肉の風味をひきたててくれます。
ひき肉の中でも鶏ひき肉だけだと、冷えると固くて食べにくい場合があります。
そんな時は、鶏ひき肉に豆腐を混ぜてまとめると柔らかく仕上げることができ、食べやす
くなります。
肉屋さんで購入する場合は、「二度ひき」にしてもらうとさらに細かくなるのでやわらか
な仕上がりになります。

高齢になると自分の体調や今後に対する不安、孤独感などのストレスから自律神経を乱し
、胃腸の働きを弱めることが食欲がわかない原因の一つにもなることがあります。
しかし、食欲がないからと食べずにいると体を動かすためのエネルギー源が不足し、必要
な栄養素が摂れず低栄養状態になります。

とくに体重が減ってきている場合は、同じひと口でも肉や卵のように栄養価の高い食品を
摂取することが必要です。
毎日の味噌汁の中にひき肉をとり入れたり、御飯にはひき肉に味をつけたそぼろを混ぜる
など普段の食事にちょっとひき肉を足して栄養量を増やすことは、要介護状態の予防にも
つながります。

このように硬くて食べづらいと敬遠されがちな肉でも、材料を選んで調理方法をひと工夫
すると、家族全員が同じ食事を食べることができます。

ぜひ今回の食事の工夫を参考にし、ご家族で同じ肉料理を美味しく味わえる機会を増やし
てみてはいかがでしょうか。

(管理栄養士 堀本愛香)