MEDIVA健康コラム

常備したい万能調味料「塩麹(しおこうじ)」

2024年04月10日(水)

草花が芽吹き、色鮮やかに変化する季節になりました。
日本は気温、湿度など発酵に適した気候に恵まれたことで、多くの発酵食品が誕生してきました。
発酵食品とは、微生物の作用により食品の保存性を高め、更には旨味と栄養価を高めた食品です。

例えば、醤油、味噌、みりん、酢、納豆、漬物、日本酒はすべて日本生まれの発酵食品です。
発酵食品は古くから日本人の食生活に根付いていますが、近年の健康志向の高まりから、
意識的に取り入れる方が増えています。
今回は、発酵食品の中でも最近注目されている「塩麴」の魅力と使い方についてご紹介します。

●塩麹とは?

塩麹は、米麹と食塩と水を混ぜて発酵させた調味料です。
発酵の力により、塩味に甘味や旨味が加わり、コクを引き出します。
最近では、食塩に変わる調味料として注目を浴びています。

塩麴に使われる米麹は、お米に麹菌を繁殖させたものです。
麹菌は、日本の発酵食品と深い関わりを持つ微生物であり、
2006年には日本醸造学会が「国菌」に認定しています。

●塩麴がもつ酵素の働き

塩麹は、肉・魚・野菜すべての食材に使うことができる万能調味料です。
麹菌によって生成された多くの酵素が含まれており、
食材そのもののおいしさを引き出してくれるだけでなく下記のような嬉しい効用もあります。

①肉や魚がやわらかくなり、旨味が増す

たんぱく質分解酵素であるプロテアーゼが繊維を切断し、でんぷん分解酵素であるアミラーゼが、
食材内の水分を保つため、特に肉や魚はやわらかくジューシーな仕上がりになります。
また、プロテアーゼが、たんぱく質をアミノ酸(旨味)に分解するので、
食材の旨味を引き出します。

②腸内環境を整える

発酵食品は腸内の善⽟菌を増やし、腸内環境を改善します。
腸内環境が整うと便通が改善し、美肌や免疫力を高める効果も期待できます。

③消化を助ける

プロテアーゼやアミラーゼは、胃腸薬にも使われる酵素で、消化を助ける働きがあります。

●減塩効果が期待できる

塩麹に含まれる塩分量は塩の1/5程度です。
塩麴には旨味やコクを出す効果があるため、食塩よりも少ない塩分量でも美味しく食べることができ、
減塩につながります。調理の際、塩麹を活用するために知っていると便利な目安は以下の通りです。

①味付けとして使う場合

塩の代用として使用する場合は、塩の2倍量が目安です。
(例)塩:小さじ1の場合、塩麹:小さじ2

②漬け込む場合

・塩麹の目安量は、食材の重さに対して1/10程度です。
(例)肉100gに対して塩麹10g(大さじ1/2≒塩分量約1.5g)

漬け込み目安時間(冷蔵庫で) 食材
30分 薄切り肉、一口サイズ肉
1時間 魚の切り身
2時間 ブロック肉、鶏もも肉1枚
3時間 野菜

●塩麹を使ったおすすめレシピ

「塩麹の肉野菜炒め」

1品で肉と野菜がたくさん摂れるので、食べ応えも栄養バランスも満点です。
野菜はお好みのものでアレンジも◎
野菜炒め用カット野菜を使うと簡単にできるのでおすすめです。

<材料(2人分)>

豚ロース肉 150g
塩麹 15g(大さじ2/3)
ごま油 小さじ1

玉ねぎ 20g(1/8個)
にんじん 20g
キャベツ 100g(葉3~4枚分)
ピーマン 20g(1/2個)
もやし 40g
ごま油 小さじ1
塩麴 小さじ1
黒こしょう 少々

<栄養成分値(1人当たり)>

エネルギー:250㎉
たんぱく質:16.7g
脂質:15.1g
炭水化物:6.9g
塩分:1.5g

<作り方>

①豚肉に「塩麹」を漬け込み、冷蔵庫で30分程度おく。
②野菜は洗い、しっかり水切りする。玉ねぎは1cm幅のくし形、にんじんは短冊切り、
キャベツはザク切り、ピーマンは細切りにそれぞれ切る。
③フライパンにごま油小さじ1と豚肉を入れて、弱火じっくり炒めて、
火が通ったらすぐに取り出す。
④③のフライパンにごま油小さじ1と玉ねぎやにんじんなどの固い野菜から先に中火で炒める。
⑤玉ねぎが透き通ってきたら、キャベツ、ピーマン、
もやしなどの柔らかい野菜を加えて中火で炒める。
⑥キャベツがしんなりしてきたら、豚肉を戻し入れ、「塩麹」、黒こしょうで味を調え、
炒め合わせたら完成。

<ポイント>

炒める順番は、肉(取り出す)→固い野菜→柔らかい野菜→最後に肉を戻して完成♪
野菜を洗った後、しっかり水切りすることで味が薄くなることを防ぎます。
お肉は塩麴の焦げ防止と野菜から水分が出て水っぽくならないよう、一度取り出します。

「味付けは塩麹だけ!鶏むね肉のソテー」

本HPにも塩麹を使用した料理を掲載しています、料理動画もぜひご参照ください。
レシピ動画https://hsd.mediva.co.jp/blog/movie/2017/10/27/917/

<ポイント>

下処理と味付けは塩麴を揉みこんで一晩漬けこむだけ。
翌日にフライパンで蒸し焼きにしてできあがり。
塩麴によって、肉が柔らかくなり麹の風味とほどよい塩味がついて美味しくいただけます!

●気を付けたいポイント

①味が濃くなりやすい
食材を漬け込み時間が長くなると食材の旨味も出てくるため味が濃いと感じやすくなります。
漬け込み時間が長くなる場合はレシピに書いてある塩麴の分量よりも
少なめにすることがコツです。
味見をして薄いようであれば最後に塩麹や他の調味料を加えて味を調えましょう。

②焦げやすい
塩麹はお米のでんぷんを糖分に変えてまろやかな甘味を出していますが、
その糖分が焦げやすい原因になっています。
そのため、塩麹に漬けた肉や魚を焼く時は、弱火でじっくり焼くことが大切です。
また、加熱前に食材の表面についている塩麹をスプーンなどで一旦取り除いてから焼き、
最後に取り除いた分を加えて加熱すると焦げにくくなります。
見た目もきれいに焼け、無駄なく美味しく頂けますよ。
「塩麴」は食塩の代わりにもなるので、どんな料理にも使うことができます。
また、塩麹自体にほんのりとした甘味や旨味があるので、使うだけで味が決まり、
まさに万能と言える調味料です。
ぜひ皆さんのご家庭にも、万能な調味料「塩麹」を常備してみませんか?

MEDIVA 管理栄養士

【参考資料】

●農林水産省「日本の食文化に欠かせない発酵の世界」
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2211/spe1_01.html

●日本醸造学会
https://www.jozo.or.jp/gakkai/notices/%E3%80%8C%E5%9B%BD%E8%8F%8C%E3%80%8D%E8%AA%8D%E5%AE%9A%E3%80%80%E4%B8%80%E9%83%A8%E6%94%B9%E6%AD%A3%EF%BC%88%E8%8F%8C%E5%90%8D%E5%A4%89%E6%9B%B4%EF%BC%89/

●国立研究開発法人 科学技術振興機構「塩麹の調味特性」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/swsj/71/4/71_232/_pdf

●日本醸造協会「塩麹に含まれる麹由来酵素および食塩の食肉調理への効果」
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010927896.pdf

●マルコメ「麹と酵素とそのはたらき」
https://www.marukome.co.jp/koji/enzyme/