MEDIVA健康コラム

高齢者の水分補給について

2015年10月02日(金)

秋の気配がいっそう濃くなってきました。
秋風もひんやりと、8月の猛暑がうそのように感じます。

気温が高く発汗も多かった夏には、小まめに水分補給をしていても、少し涼しくなると
水分摂取量が減ってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。
自覚する汗の量は減っても、尿や便、自身で気が付かない程度の汗等でも身体の水分は
失われています。

今回は、敬老の日にちなんで、高齢者の水分補給について、ご紹介いたします。

人は生まれた時が一番体重における水分比率が高く、年を重ねるごとに少しずつ減少
していきます。
通常、体重の約1%の水分が失われると、喉の渇き等の不快感を抱きますが、
高齢者は機能の低下により、喉の渇きを感じにくいため、水分摂取量が不十分になりや
すくなります。
水分不足になると身体がだるくなったり、便秘になりやすかったり、不調により転倒し
やすくなるだけでなく、熱中症や心筋梗塞、脳梗塞などの、命に係わる重大な疾患を招
く恐れがあります。

そのため高齢者は、“喉が乾いたら飲む”では遅い場合が多く、より意識的に水分補給
をして、不足させない工夫をする必要があります。

成人の一日の水分摂取量の適量は2?程度と言われておりますが、食事から摂取する量を
除くと、一日約1.2?程度必要と言われています。

ご自身で水分を摂ることの大切さを認識し、意識的に摂取していくことが大切ですが、
周りの方々のサポートがあるとより安心です。

・1時間に1度は声掛けをする
・香りの良いお茶を入れてあげる 

など、いくつか選択肢を用意したり、

・すぐに飲むことができるように水筒などに入れて手元に置いておけるように準備する

ことも大切です。

また、一度たくさん飲むと、吸収されずにすぐに尿として排泄されてしまうので、
コップ1杯(100~200ml)程度ずつ小分けに飲むのが効果的です。

そうは言ってもなかなかこまめに摂取しにくいという声もよく聞きます。
そのような時は食事の中で少しずつ増やしていくことをおすすめします。

パンよりはご飯、ご飯よりも野菜や豆腐の方が水分を多く含みます。
パンだけ、ごはんだけ、でお腹を満たしてしまうよりも、野菜や豆腐など水分の多い
食材を組み合わせると、水分だけでなく、必要な栄養素も摂ることができます。

例えばおやつでは、ようかんを水ようかんに、まんじゅうをぜんざいにすると水分が
増えます。果物やゼリー、葛湯(くずゆ)もおすすめです。

葛は天然のとろみがあり、嚥下もしやすく、漢方にも使われる食材です。
通常、葛粉を水で溶いて砂糖を加え、鍋で緩やかに加熱しながら透明になるまで混ぜ
ながら作ります。鍋を使わず、お湯や電子レンジを利用し茶碗やカップで直接作るこ
ともできます。おろし生姜を混ぜたり、抹茶を混ぜたり、果汁やコーヒー、牛乳や豆
乳を混ぜて作ると、味に変化が出て、楽しみも増します。
葛がなければ、片栗粉で代用もできます。

定番の卵料理では、目玉焼きやいり卵より、だし巻き卵にして水分を足して作ると、
しっとりして食べやすくなります。さらにその水分も、だし汁だけでなく、牛乳にす
るとカルシウムやビタミンも摂取できるのでおすすめです。

卵にヨーグルトを混ぜて炒めると、ふわふわでしっとりした美味しい仕上がりになり
ます。

また、もずくやめかぶなどの海藻類も、水分を多く含みます。そこに、オクラやきゅ
うりやトマトなどの野菜を入れたり、大根おろしを混ぜると、野菜の栄養素も併せて
摂ることができます。

身体の状態に合わせて、塩分や糖分の量、固さやとろみ具合などの食べやすさを調整
しながら、食事や間食からの水分補給を心がけてみましょう。

腎疾患や心疾患など、疾患によっては、水分制限が必要な場合もありますので、
医師に確認してから、お身体に合った適切な水分補給をしてください。

水分補給は健康維持のために欠かせません。
水分補給をつい忘れがちになるこの季節も、意識して十分に水分をとって、
毎日を元気に過ごしましょう。

(管理栄養士 力石 愛)