MEDIVA健康コラム

和食を減塩で美味しく食す

2014年02月28日(金)

昨年末、和食が世界遺産に登録されました。
和食の素晴らしさが世界で認められたことは、とても嬉しいことです。
しかし、和食は洋食に比べ塩分が多いという問題が指摘されることがあります。
そこで今回は、塩の働きと適量、そして塩分を抑えながらも和食をおいしく食べる工夫についてお伝えしたいと思います。

まず、塩(ナトリウム+塩素)とは、身体に欠かすことのできないミネラルの1つです。
体内では合成できないので、必ず口から摂取する必要があります。

「塩」特に、ナトリウムの体内存在量は、体重の約0.15%で、その多くは細胞外の体液(細胞外液)に含まれています。体内での働きとしては、水分を保持し血液の循環を調整したり、神経や筋肉における刺激を伝達したりします。

また、塩は料理には不可欠なものです。
味覚的に、塩分が薄いとそれだけで美味しいと感じにくくなり、逆にほんの少し塩分を加えることで、甘みや旨みが増すため食欲を引き出します。
また、食品を保存するためにも利用されます。
さらに食品の見栄えを良くしたり(酵素の働きを止めて変色を防いだり、葉物をゆでる時などに使い色を保持する)脱水させ食品を柔らかくしたり、臭みをとったりと、多岐にわたり使われます。

このように、私たちの生活には欠かせない塩(ナトリウム)ですが、他のミネラル(例:カルシウム、鉄など)と違い、推奨量や目安量がありません。
 成人のナトリウム必要量は、1~1.5gとほんのわずかな量で充分なのです。(味噌汁1杯の塩分は、1.5~2.0gになります)

しかし、夏になると、「塩分をとりましょう。」と言われます。

確かに汗をかくと、汗と一緒に塩分も失われるのですが、わざわざ塩をなめるようなことをしないといけないくらい汗をかく方は、限られています。(例えば、長時間のスポーツをする方や炎天下で作業をする方など)※ただし、おう吐や下痢など、必要な塩分を身体の外に出してしまうなどの体調不良の時は、点滴や飲み物で補う必要があります。

問題なのは、食事を抜いたり、パンとコーヒーだけ、野菜ジュースやヨーグルトだけ、など単品で済ませると、必要な塩分をきちんと摂取することが出来なくなることです。(塩分が摂れないことは、他の栄養のバランスも崩れていることもあります。)

ですから3食きちんとバランスよく食事を摂ることが大切になります。

反対に塩分の摂りすぎは、高血圧や胃がんの原因とも言われています。
成人の1日の塩分摂取の目標量としては、約8g未満ですが、国民栄養調査では、日本人が摂取している量は11gと言われています。(血圧が高めの方の目標量は1日6g未満です)

高血圧の食事療法には、減塩食とDASH食があります。
DASH食とは、血圧にストップをかける食事(Dietari Approach to Stop Hypertension)の略で、米国国立衛生研究所の主導でアメリカ人に向けて実施されたものです。
現代の食事で不足しがちな成分であるカリウム、カルシウム、マグネシウム、食物繊維、良質のたんぱく質を多く含み、逆に脂肪、コレステロール、飽和脂肪酸を減らした複合的な食事のことです。

この食事をよく見ると、日本人が昔から食べていた和食にとてもよく似ています。
実際に、日本人は、高血圧になりやすい傾向があるといわれる一方で、塩分を多めに摂っていても血圧の水準は、アメリカやイギリスに比べて高くない水準となっているそうです。

その理由として、米、野菜、豆類、魚介類、海藻、果物などをバランスよく組み合わせて摂る和食の食習慣が影響していると言われています。

和食に塩分が多いと言われるのは、漬物、干物など保存を目的の為に塩で漬けたものや、和の調味料である醤油や味噌をたくさん使ってしまうことにあります。
干物は、新鮮な生の魚を用いるようにし、塩分は直接振るのではなく、立て塩※など薄めに塩をすると減塩につながります。※海水と同じくらいの濃度(3%)の塩水で、魚介類の下洗いや塩味をむらなくやわらかくつける時に用いられる調理法。
水1カップに対し、塩小さじ1強くらいの割合が立て塩の目安。

また、調理の時に昆布や鰹節でとった「だし汁」を使って、汁物や煮物を作ると風味があるので、塩分が少なくても食べやすくなります。
だしの素(化学調味料)には、塩分が含まれるため、天然の昆布や鰹節でだし汁をとることがおすすめです。

さらに、野菜やキノコや海藻からもおいしいダシが出るので、具だくさんのスープや煮物は、減塩でも風味があり美味しく食べることが出来ます。(野菜、キノコ、海藻類には、カリウムが多く含まれているので、摂りすぎた塩分を外に排出してくれる働きもあります。)

おひたしなど、醤油を直にかけて食べているものを、刺身などを食べる時のように、ちょっと醤油につけて食べたり、酢や柑橘類の果汁に変えたり、ねぎやゆず、生姜、大葉などの香味野菜を利用するなど少し気をつけることで塩分量はずいぶん減らすことが可能になります。

最後に、繰り返しになりますが、塩分を過不足なくとるには、1日3回バランスのとれた食事を摂ることが大切です。

バランスのよい食事をとるには和食が有用です。

長く健康に過ごすため、塩分を摂りすぎない工夫をしながら、世界遺産「和食」のよさを味わう機会をぜひ増やしていきましょう。

(管理栄養士 大里 美紀)