知っておきたい子どもの食物アレルギー〈トラブル対策〉
2013年04月25日(木)
アレルギーの中でも、今子ども達には食物アレルギーが急増していると言われています。
厚生労働省の調査では、0~14歳の子どもの約40%、2人に1人は何らかのアレルギーを持っていて、その中でも食物アレルギーは10~15%に達しています。
中には重篤な症状(アナフィラキシーショック)を引き起こし、命にかかわることもあります。
アレルギーを誘発する量には個人差があり、ごくわずかの量でも、食べたことがあるものでも体調次第で悪化することもあります。
そういった食物アレルギーによるトラブルを、少しでも未然に防ぐために、まわりの大人が知っていてほしいポイントを5つにまとめてみました。
1,表示を確認、表示のないものに注意
食物アレルギーによるトラブルを予防するために、
・食品衛生法で表示が義務付けられているもの
『卵、乳、小麦、えび、かに、そば、落花生』の7品目、
・表示が推奨されているもの
『あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、鮭、
さば、ゼラチン、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、
りんご』の18品目
があります。
しかし、作ってその場で売るものや量り売りに表示はなく、小袋のお菓子にも外袋にだけ表示があり、小袋だけだとわからないものもあります。
市販のパッケージには『本品製造工場では○○を使った商品を製造しております』と微量混入の危険性があることを表示していることがあります。
この表示は原材料名の表示から離れたところに印刷されていることもあるので、この表記がないかしっかり包装を確認することも大切です。
また、自動販売機の飲み物でコップに注がれるタイプのものは、どのボタンを押しても、同じ注ぎ口から出るため乳製品が含まれる可能性があるので、予防には「コップ式は避けた方が無難」です。
大豆のアレルギーの場合は、納豆や豆腐やきなこだけでなく、大豆油でも反応する場合もあり、その場合にはせんべいやスナック菓子やサラダ油を使った料理、カレールウ、マヨネーズなどかなり広い範囲となります。
大豆を使った食品ではないか、食べても大丈夫なのかを慎重に確認することが必要です。
2,表示があっても慎重に
例えば『米粉で作ったパン』と表示があると小麦アレルギー向きかと思いがちですが、それでも冷静にチェックが必要です。
1,米粉100%か小麦粉は混じっていないか
2,グルテンは使用していないか
(小麦のたんぱく質の一種でコシを出すためなどに使われる)
3,小麦のパンとしっかり分けて管理・包装されているかです。
小麦粉は混じってしまうと区別がつかない上に粒子は細かく、
思った以上に室内に舞うので混入しやすいという欠点があります。
また、手作りの場合などは、調理や販売者が材料を良く知らないで表示をしている場合があります。
例えば『このパンは卵を使っていません』と表示があるのに マヨネーズを使用していたり、『乳製品は使っていません』というメニューだったけれど、最後にかけられたドレッシングにはチーズが含まれていたなどです。
3,「水で洗った」は大丈夫ではない
食物アレルギーのトラブルでは「洗ったのに」ということがあります。
牛乳を飲んだコップや牛乳パック、菜箸や料理をとりわけるトング、
まな板など水ですすいで乾かすと使っても大丈夫だと思われがちです。
しかし、微量で反応する子どもは、水洗いだけではアレルギー反応がおきます。
牛乳パックで工作した手で目をこすって目が腫れてしまったり、牛乳パックで水遊びをしていて水のかかった手足が腫れてしまうなど、食べるだけでなく、さわるだけでも反応することがあります。
また、給水用の大型ジャグのために氷を作る場合、牛乳パックなどで作るとその氷を入れたお茶を飲んでも、アレルギー症状を引き起こす場合があります。
洗浄する場合はしっかり洗剤を用いるなどして洗い残しに注意しましょう。
4,除去食で栄養不足にならないように
乳幼児にアレルギーの多い『卵』や『乳』『大豆』は子どもの成長や、
病気の予防に必要なたんぱく質を豊富にふくんでいます。
単に同じ普通の食事から『卵抜き』『乳抜き(牛乳、チーズ、ヨーグルト等)』
『大豆抜き』の食事にするとたんぱく質の必要量が足りなくなります。
たんぱく質を多く含む食品にはこのほか魚や肉があります。
除去する場合は必ず安全なたんぱく源をプラスすることを忘れないようにすることは栄養補給のために大切です。
5,ひとりひとり違う、様々なケースがあるもの
大豆のアレルギーでは煮豆はダメであっても味噌やしょうゆ、納豆は食べられたり、小麦のアレルギーではパンはダメでも、うどんは食べられたり、あるいは風邪気味などの体調不良、食後の運動の時だと、いつもより強いアレルギー反応になることもあります。
不思議に思われるかもしれませんが、 実際にはこういったケースは珍しくありません。
好き嫌いやわがままではなく、食べたくても食べられないこともあるのです。
子どもの食物アレルギーは、年齢とともに食べられるようになる場合もありますが、そうでない場合もあります。
「かわいそうに」とか「少しぐらいなら」と勝手な判断で食べさせることは、 危険が伴います。
楽しい食事が悲しいトラブルにならないために食物アレルギーの子どもがいる場合「大丈夫かな?」と一呼吸おいて対応できるようにしたいものです。
(管理栄養士 蛯原 啓子)
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