MEDIVA健康コラム

秋の味覚「栗」

2024年10月15日(火)New

●秋の味覚「栗」

秋も深まり、木々が美しく色づく季節となりました。
今回は秋の味覚の代表ともいえる「栗」の魅力についてお届けします。

みなさんは、栗を使った料理といわれて何か思い浮かべますか?
栗ご飯やモンブラン、焼き栗、栗まんじゅうなど、
頭に浮かべるだけでもお腹が鳴ってきそうですね。

栗は9月~10月ごろに旬を迎える、木に実る果物です。
現在国内では茨城県、熊本県、愛媛県、岐阜県、栃木県などで生産されています。
栗の木には雄花と雌花があり、受粉した雌花に実がなります。
元々雄花にはトゲがあり、これが実を付けるとイガとなっていきます。
イガは他の果物でいう、皮にあたりその中にある栗が果肉と種です。
鬼皮といわれる茶色く硬い部分が果肉で、それを剥いた渋皮つきのものが種です。
すなわち、皆さんが食べている部分は果肉ではなく種にあたります。

●栗の歴史

栗の歴史はとても古く、縄文時代の遺跡からも多くの栗が出土しており、
当時から食されていたようです。
京都の丹波地域で採れる大粒の栗“丹波栗”は古事記や万葉集にも登場し、
古くより親しまれていたことが分かります。
全国に知られるようになったのは江戸時代と言われていて、
京都周辺で名物として人気となり、
さらに参勤交代を通じて江戸から全国に広まったとされています。
栄養価も高く、エネルギー源となるでんぷんが多く含まれるため、重宝されていたようです。

●栗の品種

みなさんは栗の種類をいくつご存じですか?
あまり品種を気にしてみたことがなかったのですが、調べてみたところ40種類以上ありました。
万葉集に登場する「丹波栗」は京都の丹波地方で採れる大粒の栗の総称で品種としては
「銀寄(ぎんよせ)」や「筑波」などが中心です。
これらは甘味が強く渋皮煮などに適している品種です。
熊本県の生産量が多い「丹沢栗」は種の色が鮮やかな黄色のため、
甘露煮やペーストなどお菓子に使われることが多いそうです。
こちらはよくスーパーに並ぶ品種だそうです。
それ以外にも「ぽろたん」という品種があります。
ぽろたんは切れ目を入れて加熱をするとその名の通り、
ぽろっと渋皮まで簡単に剥くことができる品種だそうです。
芋のようにそれぞれに向き不向きがあるようですので、
料理に使う際は特に品種も考慮して選ぶと良いでしょう。

●栗の栄養

栗には様々な栄養素が含まれています。

★ビタミンC

ビタミンCは水溶性ビタミンの一種で柑橘類に多く含まれることで知られています。
皮膚のメラニン色素の生成を抑え、日焼けを防ぐ作用や、
肌のターンオーバーをサポートするため、肌トラブルに効果的と話題にもなっています。
栗には100gあたり33mgもビタミンCが含まれています。
オレンジは同量で30㎎なので、柑橘類の果物に負けないくらい
ビタミンCを豊富に含んでいることが分かります。
ストレスやかぜを防ぎ免疫力を高める働きがあるので、
ウイルスの増えやすいこれからの時期にはしっかり摂りたい栄養素の一つです。

★カリウム

カリウムは体内で過剰になったナトリウム(塩分)や水分を体の外に排出する働きがあります。
そのため、高血圧予防やむくみの改善に効果が期待できることで知られています。
塩分を摂りすぎたあとや、夕方に足のむくみが気になるかたは摂っておきたい栄養素のひとつです。
栗以外には、バナナなどの果物や海藻類や芋類に多く含まれています。

★食物繊維

食物繊維は「人の消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」と定義されています。
他の栄養素とは異なり分解されずに大腸まで到達することができます。
食物繊維には、水に溶ける「水溶性食物繊維」と溶けない「不溶性食物繊維」があり、
栗には不溶性食物繊維が多く含まれています。不溶性食物繊維は水分を吸収して膨らみ、
便の容積を増やします。便が増えると、
腸が刺激されるので蠕動(ぜんどう)運動が促され排便がスムーズになります。
また、大腸内の細菌により発酵・分解されていきますが、
その時に腸内細菌の餌となり菌を増やすことで腸内環境を改善することも期待できます。

★タンニン

タンニンはポリフェノールの一種で渋みの成分のことです。
栗では渋皮の部分に多く含まれています。
抗酸化作用があり、活性酸素の発生や働きを抑制したり、取り除いたりする作用を持ちます。
活性酸素は増えすぎると、細胞を傷つけ、免疫機能の低下や動脈硬化等の原因となるため、
タンニンはそれらを防ぐ働きがあります。
また、他にも収れん作用という引き締めの効果を持っています。
収れん作用とは、たんぱく質を変性させ組織や血管を縮める働きです。
この働きにより渋みを感じると言われています。
タンニンを肌に塗ると毛穴を引き締める効果を持つため、
化粧品に配合されていることもあるようです。
しかし、摂取しすぎると鉄の吸収を阻害してしまったり、
腸の粘膜を刺激することで便秘を引き起こしたりすることもるので、
過剰摂取には注意が必要です。

どのくらい食べたらいいの?

栗をたべる際はだいたい100g程度がオススメで、粒の大き目の栗なら5~6粒程度です。

栗は100gで164kcal、先ほど紹介した栄養素ではカリウムが1日の摂取目安の1/6程度、
食物繊維は1/4程度、ビタミンCはなんと1/3程度、摂取することができます。

その一方ででんぷんが多く含まれ、
エネルギー量が多くなりやすいので食べすぎには注意が必要です。

特に甘露煮やグラッセなど甘く加工されているものは、
よりエネルギー量も多くなりますので、気を付けましょう。

味の違いを楽しむためには?

「ゆで栗」が品種による味の違いを楽しめる食べ方なようです。

  • ①沸騰した湯に生栗を入れる
  • ②中火にして40~50分茹でる
  • ③茹で上がったら、やけどしないように注意して包丁で縦半分に切る
  • ④中身をスプーンですくって食べる

また、栗は傷みやすいので、なるべく早く食べるのがオススメです。

保存する際は、ポリエチレン製の袋に入れて袋の口は縛らず折りたたむように
冷蔵庫のチルド室で保管しましょう。

今年は台風などの影響をうける果物や野菜もあるなか、
7~8月にかけて適度な雨が降ったため大粒の栗が育っており、
たいへん豊作の年とのことです!

是非色々な種類の栗をお試しください。

MEDIVA 管理栄養士

【参考資料】

  • ●農林水産省 「栗の魅力を探ってみよう」

https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1910/spe2_01.html

  • ●農林水産省「令和5年産西洋なし、かき、くりの結果樹面積、収穫量及び出荷量」

https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/sakumotu/sakkyou_kajyu/nasi_kaki_kuri/r5/

  • ●医歯薬出版株式会社「臨床栄養 2024年9月号:食の教養 クリ」
  • ●農林水産省「e-ヘルスネット」
  • ●茨城を食べよう「いばらき食と農のポータルサイト:くり」

https://www.ibaraki-shokusai.net/brand/chestnuts/