MEDIVA健康コラム

腸と脳のつながり

2024年06月19日(水)

紫陽花が綺麗に色づく季節となりました。
暑さを感じる日が増え、体調に変化は現れていませんか?

最近、身体の不調における腸と脳の相互関係が注目されています。
今回は、腸と脳の関係を整えハツラツと心爽やかに過ごす工夫をご紹介したいと思います。

密接な腸と脳の関係

古くから「腹言葉」というかたちで、「感情」や「思考」と腸が
密接につながっている言葉が使われています。

例えば

・激しい怒りを抑えることができない状態を表す「腸(はらわた)が煮えくり返る」

・非常に苦しくて悲しい気持ちを表す「断腸の思い」

といった表現において、人は感覚的に腸との関係性を認識していたのでしょうか?

長い間、腸は単なる臓器の一つで、消化吸収と排泄するためだけの器官と考えられていました。
近年は腸内細菌を介して健康に役立つ研究もされています。(※1参照)

腸には脳に次ぐ多くの神経細胞が存在し、
腸と脳はネットワークで相互に影響をし合うことが分かっています。
その双方のつながりを表す言葉を「脳腸相関」といいます。

例えば、通勤途中や大事なプレゼンの前に下痢になったり、
なじみのない環境で便秘になることはありませんか。

それはストレスの刺激によって誘発されたストレスホルモンが脳から腸に信号を送り、
腸の働きに変化が起きる仕組みになっているからです。
腸の働きが過剰になると腹痛とともに下痢になりやすく、
腸の働きが不規則になると便秘になります。

また、反対に腸の調子が悪いと、その信号が脳に伝わり、
うつ・不安症状などの精神障害など、さまざまな疾病の原因になるといわれています。(※2参照

脳腸相関の研究分野においては、ストレス反応やうつ・不安症状など
精神障害に関するものが中心でしたが、近年では認知症を含む多くの
脳疾患も腸内細菌と密接に関連することが示されてきました。

例えば、腸内細菌が作り出す物質がアルツハイマー型認知症の原因といわれる、
アミロイドβの蓄積に関係していることを示唆する研究や、
アルツハイマー型認知症患者の腸内細菌は健常者と比べ、菌バランスが悪く、
ビフィズス菌の占有率が低いという報告があります。

これらの研究から、良好な腸内環境を保つことは認知機能の
改善もあると期待が寄せられています。(1参照)

●腸内環境を向上させる?善玉菌

私たちの腸の中には、約1000種類、100兆個に及ぶ腸内細菌が生息し、
大きく3つのグループで構成されています。

・身体に良い影響を及ぼす「善玉菌」

・腐敗産物などを作り出す「悪玉菌」

・そのどちらでもない「中間の菌(日和菌)」

これらの菌は互いに密接な関係を持ち、複雑にバランスをとっています。

このバランスを崩してしまう原因として、たんぱく質や脂質が中心の
食事・不規則な生活・ストレス・便秘などがあり、腸内に「悪玉菌」が増えてしまいます。

「善玉菌」は数を減らさない、または増やすことが大切で、
ビフィズス菌や乳酸菌がカギになってきます。乳酸によって腸内が酸性になり、
悪玉菌の増殖を抑え、腸内の運動が活発になるためです。

腸内に棲みつく細菌バランスを保ち、腸内環境を向上させるためには
「善玉菌」を増やすことが重要のようです。(※3参照)

●~善玉菌の増やし方「食事」~

①善玉菌を増えやすくしてくれる細菌そのものである発酵食品を摂る

納豆菌、ビフィズス菌、乳酸菌➡ヨーグルト・チーズ・キムチ、みそ、納豆、ぬか漬けなど

②腸内細菌の栄養源である食物繊維、オリゴ糖を摂る

食物繊維の多い食品➡大麦、もち麦、オートミール、などの穀類、海藻類、野菜類、果実類、豆類など

※食物の中でも食物繊維は腸内細菌の栄養源となり、善玉菌を増やすことに貢献する

オリゴ糖の多い食品➡玉ねぎ、ごぼう、にんにく、アスパラガス、バナナ、アボカド、キャベツ、豆類など

※オリゴ糖は摂りすぎるとお腹が緩くなることもあるので注意する(※4.5参照)

というわけで私の善玉菌を増やす食べ物のイチ推しは
「納豆+キムチ」「バナナ+ヨーグルト」です。
用意する時に時間や手間がかかると続けにくいですが、
こちらは手軽に取り入れられますので試してみてはいかがでしょうか。

●~善玉菌の増やし方「運動」~

腸内環境を整える(改善する)ためには食事だけではなく、運動も必要です。
但し、激しい運動はストレスになり逆効果です。
激しい運動より自分が気持ち良いと思える運動の方が全身の血行を良くし、腸内環境を整えます。
また、定期的な運動を中断し、座位中心の生活に戻すと腸内環境が悪化するデータも
あるそうです。(※6参照)

●腸内環境を整え、脳を元気に!

生命が誕生するときは、脳より先に腸が作られます。
感覚としては脳が指令を出しているかのように感じますが、実は先に誕生した腸が司令塔で、
腸内細菌が私たちをコントロールしているのかもしれません。
ハツラツと心爽やかに生活するうえで腸内環境が大事であることは間違いないようです。
腸にいる善玉菌は、ある程度の期間は存在しても、代謝し変化するので、毎日コツコツと腸内細菌を増やす食材や運動を取り入れていきましょう。

MEDIVA 管理栄養士

【参考資料】

●日本農芸化学会「腸から脳の健康を考える」(※1)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/57/8/57_570709/_pdf
●日本心身医学会総会ならびに学術講演会「腸内細菌と精神神経疾 患からみる腸脳相関」(※1)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/62/6/62_62.6_451/_pdf

●公益財団法人腸内細菌学会「過敏性腸症候群」(※2)
https://bifidus-fund.jp/keyword/kw064.shtml

●厚生労働省「腸内細菌と健康」(※3)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-003.html

●厚生労働省「ビフィズス菌」(※4)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-029.html

●厚生労働省「乳酸菌」(※5)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-026.html

●腸内細菌学雑誌「運動と腸内細菌叢」(※6)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jim/34/1/34_13/_pdf