子どもの健康被害の原因は大人の健康意識?~大人とちがう子どもの身体~
2016年05月02日(月)
子どもの日が近づき、子どもの体力など健康面のニュースも取り上げられる季節になりました。
テレビでは連日のように健康番組が放送され、様々な健康情報があふれています。
健康への不安があるために『体に良さそうな食べ物』を食べることで安心したい大人は、
自身の子どもの食事においても同じような感覚をもって与えてしまうこともあるようです。
しかし、内臓が未発達である子どもに大人と同じ感覚で与えるということは量にも中身にも
注意が必要です。
最近では、特にカロリーを低くおさえたものやビタミンや、
カルシウムなど特別に栄養強化した健康食品やサプリメントなどが身近に売られています。
しかし、子どもの健康のためにという大人の思いが、残念ながら子どもの健康被害の原因に
なることもあります。それはなぜなのか?今回は、その理由についてお伝えします。
1. カロリーを低くおさえたもの
「カロリーオフ」「カロリーゼロ」「ライト」「カロリー控えめ」などの表示のあるものは、
そのほとんどが砂糖の数百倍もある甘味料を使って甘さを補っています。
それは、カロリーをできるだけ摂りたくない大人やおいしい甘味に慣れている大人のために、
カロリーにならない替わりのもので甘さをつけている商品です。
こういった甘味料は消化吸収されず(栄養にならず)、体から出ていくことから、
中には『一度にたくさん摂るとおなかがゆるくなることがあります』と書かれている商品も
あります。
大人は、『体重増加は良くないこと』と考えがちで『カロリーを抑えることは健康に良いこと』
と思っている方は多いのですが、子どもは成長する必要があるため、未発達な内臓で効率よく
栄養を補給して体重を増加していかなければなりません。
例えばカロリーゼロの飲料500ml(500g)を与えた場合、
50㎏の大人なら500mlは体重の100分の1の量ですが、15kgの幼児だと体重の30分の1の量です。
大人と同じ100分の1の量は150mlですが、500mlを1本与えることで、カロリーゼロの甘味料を
処理する子どもの体の負担は、大人の3倍以上になるわけです。
病院で処方される子どもの薬は、必ず体重に応じた量と決まっています。
それは、子どもは、肝臓や腎臓などの機能が未発達なため、思わぬ副作用を防止するためです。
人工甘味料は薬ほどの影響ではないかもしれませんが、甘味に鈍感になったり、
常に甘いものが手放せなくなり、摂り過ぎになりやすいとも言われています。
ですから幼いうちからその味を覚えてしまうことはできるだけ避けたいものです。
甘味のある飲料であれば、子どもに与える場合は、カロリーを調整したものではなく、
果物や野菜を使ってしぼったもので『果糖ぶどう糖液糖』『ぶどう糖果糖液糖』の入らないもの、
できれば『香料』の含まれていないものが最適です。
2. ビタミンやカルシウムなどを栄養強化したもの(健康食品やサプリメント)
ビタミンは、多くの種類があって、不足すると問題になるものも多いのですが、その一方で意識しなくても酸化防止剤や着色料としても入ってくるビタミンもありますし、サプリメントなどで多く摂ると過剰症になり健康被害がおきるビタミンもあります。
「たくさん摂っても尿に排泄されるから大丈夫」といわれているビタミンでも尿にしてくれている腎臓の負担を重くしていることは、なかなか気づかれていないことです。
また、カルシウムは、たくさん摂っても、必ずしも身長の伸びが良くなるとは言えず、骨はカルシウムだけでは丈夫になりません。吸収を悪くするものを多く摂っていたり、カルシウム以外の栄養が不足したり、運動なしでは骨の健康は保てないことがわかっています。
このように体にいいはずの栄養も、摂り方を間違うと、健康増進にならず、お金の無駄にもなることもあります。
口から入れたものはすべて肝臓の働きによって体に負担がかからないように代謝されて尿や便の中に排泄されます。
尿への排泄に関わる仕事をするのが腎臓ですが、未発達であれば、排泄能力も低いので時間がかかってしまうわけです。
ですから極端に食事の摂取が難しく、栄養状態が著しく悪化している場合を除けば、サプリメントのようにギュッとつまった成分をダイレクトに体に入れることは得策ではありません。
食品そのものの匂いや味や舌触りなどを楽しんだり、魚の骨を飲み込まないように口から出す器用さを身につけることの方が大脳へ良い刺激となり健全な成長へとつながります。
健康について無関心でも困りますが、健康意識が高まりすぎて冷静さを失うことも問題です。
身近なお菓子や飲み物、健康食品なども安易に広告に惑わされないことが大切です。
特に幼い子どもに与える前には表示を確認しましょう。
新しい食品がたくさん出回っていて、何が安全かもわかりにくくなってきました。
迷ったら、表示の材料名に長いカタカナ、英数字などたくさん表記があるものは注意して購入、摂取することをおすすめします。
子どもの身体は、大人を小さくしたものではありません。
子どもの健やかな成長のためには子どもが口に入れるものの中身には十分気を配ることが大切です。
(管理栄養士 蛯原 啓子)
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