知っておきたい!食物アレルギーの基礎知識
2023年06月08日(木)
近年、食物アレルギーを持つ人は増えてきていると言われています。日本では、加工食品への表示について、食品表示法により食品表示基準が定められているのをご存じでしょうか。
実はこの基準が今年3月9日に改正されたことで、新たに「くるみ」のアレルギー表示が義務付けられることになりました。実際に表示義務が開始されるのは、企業への猶予期間を踏まえ再来年(2025年)4月からになります。
今回は、食物アレルギーの概要と、くるみが新たに追加された背景についてご紹介します。
◎食物アレルギーってどんなもの?
アレルギー反応を起こす物質(アレルゲン)には、ダニ・カビ・花粉・食物など色々なものがありますが、その中で食物によってアレルギー反応が引き起こされる場合を食物アレルギーと呼びます。
◎アレルギー反応はどうして起きるの?
私たちの体には「免疫」という仕組みがあります。ウイルスや細菌などの異物が入り込んだ時、これを排除するために「抗体」が作られ、再び侵入してきた時に抗体が攻撃することで病気の発生を未然に防ぐことができるというものです。
しかし本来排除する必要のない花粉や食物などを異物と認識して、誤って抗体を作ってしまうことがあります。この抗体は、免疫に関わる「マスト細胞」と呼ばれる細胞の表面にくっつきます。そして、再び、この抗体が作られる原因となった異物が侵入してくると、この抗体と結びつきます。くっついた刺激によって、マスト細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質が放出され、この物質が原因で様々なアレルギー症状を引き起こしてしまうのです。
初めての侵入 2回目の侵入
◎アレルギー症状にはどんなものがあるの?
アレルギー症状としては皮膚症状から消化器症状まで幅広くありますが、中でも皮膚症状が最も多く見られます。また症状の程度についても、軽症から重症まで個人差があります。
<アレルギーが出る場所と主な症状>
・皮膚症状:かゆみ・じんましん・むくみ
・呼吸器症状:くしゃみ、鼻水、咳、喘鳴(ヒューヒュー、ゼーゼー)
・粘膜症状:目の充血・腫れ・かゆみ
・消化器症状:腹痛・下痢・嘔吐
また重症化した場合、アナフィラキシーを発症することもあります。これは皮膚、呼吸器、消化器など複数臓器に対して強い過敏反応が出現した状態をいいます。中でもこの症状が進行することで、血圧が下がり意識障害などを伴う状態をアナフィラキシーショックと呼びます。この状態になると命に関わる危険性があり、早急に適切な治療が必要になります。
ショック状態の有無に関わらず強い症状が出た場合は、すぐに病院へ受診することが大切です。
◎アレルギーの発症年齢は?
食物アレルギーは小児から大人まで認められますが、その大部分は小児期に発症します。その後年齢とともにタンパク質に対する消化機能の分解能力が発達することで、特別な治療を行わなくても自然に症状がなくなっていくケースがほとんどです。
一方で大人になってから発症する場合、アレルゲンとしては多い順に小麦、甲殻類、果実類、魚類、木の実が上位を占め、小児型と異なり耐性を獲得していくことが少ないと考えられています。
◎アレルゲン(食物アレルギーを引き起こす原因食品)にはどんな食品が多いの?
今年3月消費者庁の報告によると、食物アレルギーの原因食物として最も多かったのは鶏卵、続いて牛乳、木の実類です。前回の調査まで原因食物の上位3品目は鶏卵、牛乳、小麦でしたが、今回の調査では木の実の割合が増加し、第3位という結果になりました。
(第5位の落花生(ピーナッツ)は、木の実の対象外)また木の実の内訳を見てみると、くるみが一番多いことが分かります。
◎「くるみ」が表示義務になったのはなぜ?
アレルギー表示対象の食品は、過去アレルギー症状が発症した症例数や重症度により選定されています。消費者庁が公表した実態調査によると、くるみにおけるアレルギー症例が9年間で10倍以上の増加が見られました。
くるみによるアレルギー症例が増加している理由としては、くるみの消費量の増加が関係していると言われています。農林水産省の統計によると、1985年のくるみの消費量は約7000トン、2020年は約5万6000トンと35年間で約8倍に増加しているという報告もあります。こうした背景としては、健康志向の高まりからナッツ類の栄養価が注目されたことが挙げられます。小腹が空いた時に間食として摂ったり、菓子にアクセントとして加えられたり、他にもクリームやルーなどに隠し味として練りこまれていることもあるようです。
くるみのように食物アレルギーの原因物質は、時代の変化とともに変わっていく可能性があると考えられ、今後も調査・研究での報告により適宜、見直しが行われます。
◎アレルギー表示のルールを確認しましょう!
平成13年4月厚生労働省より、食物アレルギーを持つ人の健康危害を防止する目的で、アレルギー物質を含む食品表示が義務付けられました。表示規制の対象は、箱や缶、ビンなど容器包装された加工食品のみです。
表示食品は、必ず表示が必要な「特定原材料」と、表示が推奨されている「特定原材料に準ずるもの」の2種類に分類されています。今回新たに追加された「くるみ」は、「特定原材料に準ずるもの」から「特定原材料」の食品に変更となったため、表示義務が発生することになります。
ただし、外食やテイクアウトなどは規制の対象外です。外見だけでは判断できない場合が多いため、食物アレルギーのある方は、直接店員に使用食材を確認することが必要です。
今後も食生活の変化に伴い、食物アレルギーを持つ人は増加していくと考えられますが、もし食物アレルギーを発症したかもしれないと思ったら、まずは速やかに病院を受診しましょう。何かを食べてかゆみなどの症状が出たからといって食物アレルギーと断定することはできません。食物を自己判断で除去せず、専門の医師の元で安全に食べられる範囲を確認することが大切です。
MEDIVA 管理栄養士
◎参考文献
・厚生労働省/食物アレルギーとは
→https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-08.pdf
・消費者庁/食品表示について
→https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10905100-Kenkoukyoku-Ganshippeitaisakuka/0000121258.pdf
・消費者庁/アレルゲンを含む食品に関する表示
・消費者庁/くるみの義務表示化の経緯等について
・消費者庁/食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書
・食物アレルギー研究会/種実(ナッツ)類アレルギー
→https://www.foodallergy.jp/tebiki/nuts/
・独立行政法人 環境再生保全機構/食物アレルギー子どものための食事の基礎知識
→https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/allergy/recipe/knowledge/processfood.html
・食品表示.com
→「くるみ」が食物アレルギー表示で義務化される方針となりました。 | 食品表示お役立ちガイド-食品表示.com (maru-sin.net)
・食物アレルギー診療ガイドライン2021
→https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001331/4/food_allergies.pdf
・東京都福祉保健局/東京都アレルギー情報
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