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「第23回保険者による健診・保健指導等に関する検討会」が開催されました

2016年08月03日(水)

先日、厚労省主催の「第23回保険者による健診・保健指導等に関する検討会」を傍聴いたしました。内容をお伝えいたします。
資料は下記サイトにアップされておりますので、ご覧ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000131908.html
当日は、以下について話がありました。
1. 特定健診・特定保健指導の見直しについて
2. 保険者インセンティブの検討状況について(高齢者支援金の加算、減算制度)

健保組合の関係者の方々におかれましては、どちらも興味深い項目だと思います。特に2については、どうなるのかと気にされている健保の方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、今回、2の議題に対する議論の時間が、あまりなかったこともありますが、まだ方向性(検討されている項目)が示されただけでした。
閣議決定においては、加算・減算の見直しがうたわれているものの、支援金の額の大きさに関わる問題なので、まだまだ慎重な議論と各方面への調整が必要なのだろうと推測します。

では以下に、今回の概要を報告します。

 

1. 特定健診・特定保健指導の見直しについて

制度について改めて次のような整理がありました。

●今後の特定健診・特定保健指導の基本的な枠組みは現行通り
①現行の内臓脂肪蓄積の程度とリスク要因の数に着目した選定基準を維持
②現行の腹囲基準(男性85㎝以上、女性90㎝以上)を維持
●腹囲が基準未満だがリスクがある者は、特定保健指導の対象とはならない
特定保健指導の枠組みでは、腹囲が基準未満の人は制度の対象外
ただし指導は必要であり重要な課題。引き続き検討。実施の場合は、別の枠組みで実施

※特定保健指導の対象者は、法令で内臓脂肪の蓄積をもとにした生活習慣病を対象と規定されている(法令:高齢者の医療の確保に関する法律)

一部マスコミで、腹囲が基準からなくなるといったような報道があったようですが、改めて検討会でその情報は正しくないとの言及がありました。
これまでの特定健診・特定保健指導については成果が出ており、引き続き第3期でも継続して実施されていきます。
やせメタボへの対策については、「対策は必要」としながらも、現状枠組みがなく、実施はまだ難しそうという雰囲気に見受けられます。

●検査項目について
変更の可能性があるものとしては、おもに下記の案が出されています。
産業保健の定期健診項目とも関わりがあり、定期健診項目の見直しもふまえ、引き続き検討されるようです。

・LDLコレステロール以外にも、non-HDLを用いてもよいことにしてはどうかという案
-LDLは項目として維持する。測定法(直接法、フリードワルド式)については検討
(non-HDL: 総コレステロール値からHDLコレステロール値を引いた値)

・血糖は、空腹時血糖、HbA1cが測定できない場合は、随時血糖でも判定ができるようにしてはどうか(食直後を除く)という案
-随時血糖を詳細な項目に追加する

・血清クレアチニンを、詳細な項目として追加する案
-背景に、糖尿病性腎症に対する重症化予防の取り組みを推進したいという動き
2. 保険者インセンティブの検討状況について

後期高齢者支援金の加算・減算制度について、健保組合、共済組合を対象とする新たな制度について、現在ワーキンググループで議論されています。
厚労省の事務局から制度案が出され、現在まだ議論段階とのことですが、制度案の中でのポイントをお伝えします。

(現行)
①特定健診・特定保健指導の実施率のみによる評価
②加算減算の方法(H26年度の例)
加算は健診等の実施率が0%の保険者(142保険者)→支援金負担増
減算は実施率が相対的に高い保険者(182保険者)→支援金負担減

(見直し案)
①特定健診・特定保健指導の実施率のみではなく、複数の指標による総合評価へ
②増減方法は、加算と減算の規模は同じにし、より多くの保険者に広く薄く加算、減算は段階的にする

見直し案の加算・減算の指標の設定については、下記のような議論がされているそうです。

○優先的な指標と、選択的な指標に分け、それらを合わせて評価する

優先的な指標:
①特定健診の実施率(目標値(単一健保90%、総合健保85%)および実施率上昇幅)
②特定保健指導の実施率(目標値(単一健保60%、総合健保30%)および実施率上昇幅)
③要医療者への受診勧奨
④健診結果等に基づく、わかりやすい情報提供の実施
⑤被扶養者への対策

選択的な指標:
①がん検診・歯科健診等
②糖尿病当の重症化予防のための個別介入
③40歳未満も含めた健康づくり
④事業主との連携

○データヘルスの取り組みに合わせ、新たな加減算制度の仕組みは、H30年度の取り組みをH30年度の支援金に反映させる(精算はH32年度)。
※特定健診・特定保健指導の実施率については、H29年度の実績をH30年度の支援金に反映

○加算も減算もされない段階の設定についても検討する

○ジェネリック薬品の利用促進について
「指標の設定の中に、差額通知など加入者へのジェネリック推進の働きかけの取組を追加すべき。」
「ジェネリックの利用促進は、保険者も差額通知等の取組をしているが、医療提供者における処方時の連携や、供給体制など、保険者の努力以外による要素も大きいので、他の指標と同一の扱いにすべきではない。」
との意見が出ており、ジェネリックの利用促進への取り組みについては、意見がわかれているようです。ジェネリックの利用促進については、これまでも指標に入れてはどうかという話が出てきていますが、慎重に議論がされているのではないかと推測します。

現行の加減算制度は、保険者に義務付けられている特定健診・特定保健指導の実施率のみで評価されていますが、新しい制度では、そのほか様々な指標が総合的に評価されるような方向で議論がされているようです。保険者に義務化されている特定健診・特定保健指導の実施率以外にも、今後は義務化されていない取り組みも評価の対象となる点には賛否両論あり、またどのような指標とするかにもさまざまな意見があるようですが、保険者の取り組みがきちんと評価される制度となることを期待したいと思います。

今後もまた傍聴にまいりましたら、お伝えしていきたいと思います。