「第28回保険者による健診・保健指導等に関する検討会」が開催されました
2017年04月06日(木)
先日、厚生労働省検討会「第28回保険者による健診・保健指導等に関する検討会」を傍聴してまいりました。内容をご報告します。
資料は下記、厚労省のサイトにアップされておりますので、ご覧ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000158940.html
2018年度からの第3期特定健診・特定保健指導実施に向け、見直しの検討が進められてきましたが、1月に運用見直し案がまとめられました。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000149240.html
先日の検討会では、さらに詳細についての検討がありました。
今回の見直し案は、いまだ特定健診・特定保健指導実施率の低い協会けんぽや国保も含め、「実施率の向上」を目指す意図が色濃いものとなっていると感じられます。実施率向上を図るため、制度運用の弾力化や健診項目の見直しが盛り込まれるようです。
それでは、以下お伝えいたします。
まず、現行の特定保健指導対象者の選定基準に変更はありません。腹囲による内臓脂肪蓄積の程度(男性85㎝以上、女性90㎝以上)とリスク要因の数より対象者を抽出する現行通りの選定方法が来期も引き続きます。また、腹囲が基準未満でリスク要因がある人については、特定保健指導の枠組み内での対象とはならないが、今後の重要課題として検討を続けていくということになりました。
次に、制度運用の見直しについて以下①~⑦が挙げられます。とくに①~⑤までは、運用の弾力化が図られています。
①初回面談から実績評価を行う期間の最低基準を3か月経過後とする(3か月経過後であれば、評価可能)。ただし、保険者の判断で、現行通り6か月後の評価実施や、3か月経過後の評価後に、独自のフォローアップを行ってもよい。
②2年連続して積極的支援に該当した者のうち、1年目に比べ、2年目の状態が改善している者については、2年目は動機付け支援相当でも可とする。
当該年度の特定健診の結果が、前年度の特定健診の結果に比べ、以下に該当する場合
BMI<30…腹囲1.0㎝以上かつ体重1.0㎏以上減少している者
BMI≧30…腹囲2.0㎝以上かつ体重2.0㎏以上減少している者
※BMIに代えて体重で判別の場合は、「体重85㎏」以上
※判定時期は、H29年度を1年目として取り扱う
③積極的支援対象者について、ポイントの在り方や新たな指標作成のため、モデル実施をする。
モデル実施でいくつかの要件に該当すれば、特定保健指導とみなす。モデル実施の結果、第3期の途中で、継続的支援の見直しもあり得る。
〈特定保健指導とみなす要件〉
・初回面接と行動計画の実績評価を行っていること
・行動計画の実績評価時点で、腹囲と体重の値が健診結果に比べて改善していること
・喫煙者に対しては、禁煙指導を実施していること(標準的な健診・保健指導プログラムを参考に実施)
・対象者に対して行った継続的な支援の実施状況を、厚生労働省に実績報告として報告すること(XMLファイル)
上記①~③までは保険者の皆さまにとって、今後の方針や運用方法に影響するものと考えられます。
次の④、⑤については、健診実施当日の特定保健指導実施がより拡大することで、保健指導の実施率向上が期待されていると思います。
④初回面接と実績評価の「同一機関要件」を廃止する。
⑤初回面接の分割実施を可能とし、特定健診受診当日に対象者と見込まれる者に初回面接をできるようにする。
また、以下も変更となるようです。⑥については、遠隔面談の実施の拡大が見込まれます。⑦についてはシステムの改修も必要になってくるようです。
⑥情報通信技術を活用した遠隔面接を導入しやすくなるよう、国への事前届け出を廃止。
実績報告(XMLファイル)の保健指導情報個票のコードに「遠隔面接」を追加。
⑦その他の運用改善
特定健診の結果に関する受診者本人への情報提供の評価
具体的には、実績報告(XMLファイル)の特定健診・質問票情報の個票に、新たに「情報提供の方法」の項目を設ける。
など
上記が制度運用に関する見直し点でしたが、検査項目等についても、今回見直される点があります。
⑧基本的な健診項目に下記追加
・LDLコレステロールの代わりに、non-HDLコレステロールでも可
保健指導判定値:150mg/dl以上、受診勧奨判定値:170mg/dl以上
・空腹時以外でHbA1cを測定しない場合は、食直後を除く随時血糖でも可(食後3.5時間以上10時間未満)※通常は、現行どおり空腹時血糖またはHbA1cを測定
保健指導判定値:100mg/dl以上、受診勧奨判定値:126mg/dl以上
⑨質問項目の見直し
・「食事をかんで食べる時の状態」を追加(「体重増減±3㎏以上」を削除)
⑩詳細な健診項目に関する変更
・血清クレアチニン検査を追加。eGFRで腎機能評価。
・心電図検査は、特定健診結果で、基準該当(血圧・問診結果等)かつ医師が必要と認める者に対し実施する。
・眼底検査は、特定健診結果で、基準該当(血圧・血糖)かつ医師が必要と認める者に対し実施する。
最後となりましたが、実施率についてです。健保はじめ、保険者の皆さまにとっては、インパクトが大きい事項ではないでしょうか。
⑪全保険者の特定健診・特定保健指導の実施率を公表(H29年度実施分から)
特定健診実施率と特定保健指導実施率の目標は、改めて以下に掲載いたします。
○第3期実施率目標(抜粋)
〈単一健保〉
特定健診: 90%以上(第2期目標と変わらず) ※H26年度実施率: 74.7%
特定保健指導: 55%以上(第2期目標:60%以上) ※H26年度実施率: 21.5%
〈総合健保〉
特定健診: 85%以上(第2期目標と変わらず) ※H26年度実施率: 68.0%
特定保健指導: 30%以上(第2期目標と変わらず) ※H26年度実施率: 10.5%
〈協会けんぽ〉
特定健診: 65%以上(第2期と変わらず) ※H26年度実施率: 43.4%
特定保健指導: 35%以上(第2期:30%以上) ※H26年度実施率: 14.8%
〈市町村国保〉
特定健診: 60%以上(第2期と変わらず) ※H26年度実施率: 35.3%
特定保健指導: 60%以上(第2期と変わらず) ※H26年度実施率: 23.0%
〈全国目標(保険者全体)〉
特定健診: 70%以上(第2期と変わらず) ※H26年度実施率: 48.6%
特定保健指導: 45%以上(第2期と変わらず) ※H26年度実施率: 17.8%
今回の見直しで、実施率の向上を目指して保健指導の運用がかなり緩和されることとなりそうです。ただし、運用の具体的な事項については、現時点ではまだ不明なところが多く、今後の議論の中で公表されると思われます。
質を担保しつつ、しっかりと効果を出せるよう、弊社も柔軟に取り組んでまいりたいと思いますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。
今後とも、情報をキャッチアップして、皆さまへもお伝えしていきたいと思っております。