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「第17回がん検診のあり方に関する検討会」が開催されました

2016年05月17日(火)

先日5月12日、厚労省にて「第17回がん検診のあり方に関する検討会」が開催されました。
簡単に、傍聴した内容をお知らせいたします。

当日の資料は下記にありますので、ご確認ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000124107.html
これまで検討会では、市町村でのがん検診についての検討が主だった印象ですが、今後は職域でのがん検診についても、ガイドラインの策定などがされていくとのことです。
今回の検討会では、職域の中でも、健康保険組合でのがん検診実施状況の報告がありました。
これまで健保組合での実態が把握されていないとのこと、調査自体が前進の様相でした。
産業保健でも参考になるものもあるのではと思います。

健保連副会長の白川修二氏も出席しており、健保の要望等の意見がありましたので、下記ご参考ください。

○健康保険組合におけるがん健診に関する実施状況(厚労省が実施した調査によるもの:1,406健保対象にアンケート送付、うち1,238組合より回答)

・検診受診率:被保険者はおおむね高い(国の目標50%を超える項目が多い)。被扶養者は低い
– 被保 胃がん56.6%、肺がん71.9%、大腸がん60.8%、子宮頸がん32.2%、乳がん34.7%
– 被扶 胃がん27.5%、肺がん30.3%、大腸がん30.5%、子宮頸がん24.0%、乳がん27.1%

・要精検率:被保の要精検率は低め。被保より、被扶のほうが高い項目が多い
– 被保 胃がん44.2%、肺がん45.1%、大腸がん45.2%、子宮頸がん64.9%、乳がん69.5%
– 被扶 胃がん67.0%、肺がん73.1%、大腸がん56.6%、子宮頸がん72.6%、乳がん77.9%

※ただし、以下の点に注意が必要
割合は、健保数ではなく、人数ベース
検診、精検について、対象者数・受診者数のどちらも把握している健保でのみ集計
検診項目ごとに母数がかなり異なる(例:被保の検診受診率 4万弱~470万弱)

(以下の数字は健保数)
・がん検診受診者数を把握している 508(41.9%)/把握していない 730(59.0%)

・がん検診(胃・肺・大腸・乳・子宮頸がんのうちいずれか)の未受診者に対して
再勧奨を行っている 195(15.8%)/行っていない 1029(83.1%)/未回答 14(1.1%)

・がん検診要検精受診者を把握している 50(4.0%)/把握していない 1,188(96.0%)

・がん検診要精検者(胃・肺・大腸・乳・子宮頸がんのうちいずれか)への受診勧奨について
再勧奨を行っている 494(39.9%)/行っていない 710(57.4%)/未回答 34(2.7%)

ほか、資料(資料5、参考資料1、2、3)をご覧ください。

○健保連・白川氏の補足や意見
・がん検診に限らず、被扶養者の健診・検診受診率は低く、健保にとって課題。
(市町村での検診結果は健保では把握できておらず、被扶の受診率が低い一因となっている)

・精密検査について、被保険者・被扶養者の受診率は低い。データヘルス計画で施策として掲げる健保も多い。

・検診機関の検診結果フォーマットがばらばら、紙での提出のところもあり、健保でも数字を把握できていない。検診機関のフォーマットを統一してほしい。

・どのがん検診を実施したらよいのかわからず、従来の検診を踏襲している健保が多い。少なくとも受けるべき検診項目等、健保向けガイドラインがほしい。

・健保(職域)にとっては、健診・検診の費用対効果の視点は大きい。「健康を守る」ためだけでは説得力がないので、そこも頭に入れてほしい。

今回の調査は、まだ不十分なところもある調査ではありますが、検診項目によって受診状況がよいもの、悪いもののばらつきがある点、また、健保組合によっても、対応にかなり差があるという点が見えてきたと思います。

がん検診でポイントとなってくるのは、次の二つです。

①適正年齢での検診受診率を高めること
②要精密検査の受診率を高めること

検診受診率を高めるためには受診勧奨ができればよいですし、要精検の受診率向上のためには、健診結果をフォローすることも大切です。
今回の調査が、そういった対策を職域全体で考えていくことにつながればよいと思います。

今後検討会では、分析結果の公表やそれを基にした対策、指針等の発行、精密検査受診率の目標値、市町村と職域(目指すのは全体)で比較可能となるようなデータのあり方などを検討していく予定とのことです。

今後も、本検討会に注目していきたいと思います。